はじめまして、えるいちです。
本気で取り組んで1年で外来がん治療専門薬剤師になった時、薬局の責任者をしつつ、2人の子育てをしつつ、薬剤師会の理事をしたりしてました。
働きながら専門薬剤師になる方法を発信してます。




今回は専門薬剤師に1年でなりたいけど何をしたらいいか困っている人のために、外来がん治療専門薬剤師を1年で取得するためのロードマップを10ステップでまとめました。



【本記事の内容】
1:施設長の了承を確認する
2:基本的な要件を達成しているか確認する
3:日本臨床腫瘍薬学会に入会する
4:病院研修に応募する
5:学会が開催しているセミナーを受講する
6:介入事例、10症例を書く
7:必要書類を準備して申請する
8:試験勉強
9:面接の準備
10:学会に認定申請する
11:資格が活用できる環境かどうか考えておこう
このステップを順番に進めていきましょう!

ステップ1:施設長の了承を確認する
「施設長の同意書」が申請書類を提出する際、必要になります。
専門取得のための取り組みをスタートする前に必ず施設長の意向を確認しておきましょう。
先に確認すべき理由は、他の要件は不足していても時間さえあれば解決しますが、施設長が同意してくれるかどうかは組織が変わらないと解決しません。
努力がムダにならないためにも先に確認しておきましょう。
(大手調剤で会社が促進しているのであればすんなりOKが出るのが、そこまで大変じゃないケースもあります)
ステップ2:基本的な要件を達成しているか確認する
所属長の同意以外にも資質要件があります。
取り組みをスタートしてからでも補えますがスケジュール確認のためにも満たしているか確認しておきましょう。
外来がん治療「専門薬剤師」なら実務経験5年が必要
(5年目じゃないので注意)
・外来がん治療認定薬剤師(APACC):3年
・外来がん治療専門薬剤師(BPACC):5年
それぞれの取得に必要な実務経験の年数です。
よく「入社◯年目」って言い方をしますが、この考え方とは違います。
APACCの3年は入社4年目(3年+数ヶ月)と同じ意味です。
あくまで実際に働いた年数なので注意しましょう
認定薬剤師の資格があるか
外部団体が認定している認定薬剤師の資格を持っているか求められます。
どんな認定資格でもいいわけでなく、学会が提示している認定が必要です。
対象の認定は以下のとおり
・日本病院薬剤師会生涯研修履修認定薬剤師
・薬剤師認定制度認証機構により認証された生涯研修認定制度による認定薬剤師
・日本医療薬学会認定薬剤師
・日本薬剤師会生涯学習支援システム「JPALS」クリニカルラダーレベル5
ステップ3:日本臨床腫瘍薬学会に入会する
専門薬剤師になるためには認定している学会の所属が必要です。
学会とは何か、は以下の記事を参考にしてください。
学会に入るにはどうすればいいか解説しています。
臨床腫瘍薬学会とは?【外来がん治療専門薬剤師を目指すなら入会必須】
ステップ4:病院研修に応募する
(1年で専門薬剤師になりたい人向けの項目です。認定薬剤師になるためには必須でないのでご注意を)
外来がん治療専門薬剤師になるには
外来がん治療認定薬剤師(APACC)の取得+実務経験5年+病院研修修了
外来がん治療認定薬剤師を取得のタイミングによらず病院研修を受けることができます。
認定薬剤師の取得より先に研修を受け、1年で外来がん治療専門薬剤師になることも可能です。
スケジュール的にあわてない人はこの項目は飛ばしてOKです。
認定薬剤師になる前に病院研修を受けた人がいい人は次のとおりです。
【病院研修を先に受けた方がいい人】
・1年で外来がん治療専門薬剤師を取得したい
・介入の症例が足らなくて介入の機会を増やしたい
・座学だけでなく臨床の現場で知識を学びたい
ステップ5:学会が開催しているセミナーを受講する
学会のセミナー研修を受講して60単位取得する必要があります。
・スタートアップセミナー:10単位
・ブラッシュアップセミナー:14単位
・エッセンシャルセミナーA・B・C:それぞれ13単位
・日本臨床腫瘍薬学会 学術大会:20単位
その他にも単位取得できる講習・セミナーがあるのでホームページで確認してみてください。
学術大会への参加(発表者でなくてOK)でも単位は取得できます。
単位を目的にするより、基礎知識を正しく身につけるために受講しましょう。
ステップ6:介入事例、10症例を書く
申請には「がん患者を対象とした薬剤管理指導の実績50症例以上を有し、これらの中から、外来のがん患者の薬学的介入実績の要約(事例)を10例提出すること。」が必要になります。
症例を書くのは初めてって人も多いと思うので注意点と進め方を解説します。
1:まずは1症例目を書くための対象症例を探し出そう!
症例を書くには対象になる症例の事例が必要です。
理想は介入している最中で、「この人の症例書けそうだな」と思った症例を追いかけながら書いていく書き方です。
ただ慣れていない1症例目は全体像がわからないと書きにくいので、1症例目はすでに介入済みの症例を探して書くのがオススメです。
過去のトレーシングレポートや薬歴を探って書いてみましょう。
・外来で抗がん剤治療している患者さんの症例
・副作用や相互作用についての問題に遭遇してトレーシングレポートを提出した
・正しい根拠による介入で問題解決できた
こういった方がいないかに注目して探してみましょう。
2:初めは文字数制限を気にせず情報を書き出そう!
外来がん治療専門薬剤師の要件としては600字の文字数制限があります。
必要な方法を簡潔に伝える能力を確認するためですが、初めから文字数内に収めるのは難しいです。
初めは文字数を気にせず必要な情報を書き出してみましょう。
・治療の概要、がん種などの必要な情報
・どんなイベントが生じ、根拠をもってどんな提案をしたか
・提案した後どういった結果になったか
こういった順序を意識して書いてみましょう。
書き出していくと情報が頭で整理できてくるので、不要な情報を削れるようになってきます。

3:「査読」はかなり重要!根拠が伝わる症例にしよう
2〜3症例書けたら他の人に「査読」してもらいましょう。
理想的なのはすでにがんの専門資格を持っている薬剤師に読んでもらうこと。
客観的に見てもらうことで伝わりやすい文章になっているか、根拠は正しいかを整理できます。
病院研修の際に査読をお願いして見てもらえる関係づくりをしておくのが一番オススメです。
ただ無理強いはできないので押し方には注意しましょう。
他には下記のような手段があります。
・社内の専門取得済みの人にお願いする
・学生時代の友人でお願いできる人を探す
・X(Twitter)などのSNSでがん関係のアカウントに連絡してみる
10症例全てが無理でも数例見てもらえるように誠意を持ってお願いすれば見てもらえることは多いです。
急なお願いとかに慣れていないとハードル感じるかもですが、合格確率をあげるためにも頑張ってみてください。
4:書き方のルールはきちんと読んで守ろう!
ある程度症例が書けたら学会が提示している書き方のルールに合っているかチェックしましょう。
レジメンの表記の仕方や必要な情報、緩和症例が何症例まで使えるかが提示されています。

書き方のルールに沿って書けてないって項目が多いと症例で落ちることもあります。
ルールをきちんと守れるか、って素質確認のポイントだと思って取り組んでみましょう。
5:10症例のバランスを意識して調節しよう!
10症例くらい書けるようになってきたら「症例のバランス」もチェックしてみましょう。
同じがん種や同じ副作用の介入症例ばかりだと、どれだけすごい介入症例でも落ちることがあります。
理由は「専門性が判断できない」から。
「すごくレアな副作用の介入ができた」ってことより「いろんなケースに正しく柔軟に対応できる」方が合否を判断する人の印象はよくなります。
同じような内容に偏ってきている場合には、違うタイプの症例がないかもう一度探してみてください。
ステップ7:必要書類を準備して申請する(事前に注意すべき書類もあります!)
毎年8月中旬に受験申込の申請期間がきます。
必要な書類を準備して期限内に提出しましょう。
【必要書類】
(1)薬剤師免許証 の写し(A4版に縮小コピー)
(2)取得している認定薬剤師の認定証の写し(A4判にコピー)
(3)捺印書類一式
- 3-1 3年以上の実務に従事していることの証明書
- 3-2 所属施設長の同意書
- 3-3 薬学的介入実績の要約(10事例)に携わったことの誓約書
(4)講習会履修単位の申請書および、参加証(受講証明書)の写し
- 講習会の履修単位申請書
- 参加証・受講証明書の写し
いずれもA4用紙にコピーし、単位申請書に記載されている順に並べる
(5)外来がん治療認定薬剤師 新規申請チェックリスト2025
(1)〜(5)を揃えて郵送します。
注意点①
会社によっては施設長の同意書などの作成に時間がかかる場合があります。
社内でどういった時間が必要なのか事前に確認しておきましょう。
注意点②
症例は既定のフォーマットで提出する必要があります。
wordなど別の用紙で書いていた人はきちんと書き直しをしましょう。
その他にも細かい注意が複数あるので申請前に学会ホームページを確認してミスがないようにしましょう!
ステップ8:試験勉強
一発勝負の筆記試験です。
毎年11月の末に実施されます。
Webで開催されますが、会場に向かってパソコンの前で制限時間内に実施されます。
労力としてもかなりウエイトの高い項目なのでしっかり準備が必要です。
1:参考書の準備
まずは学習のベースとなる参考書を準備しましょう。
学会が開催しているセミナーでも知識は得られますがモレヌケなく知識を得るために必要です。
何を買っていいかわからない人は王道の参考書からがオススメです。
2:代表的ながん種の特徴を知る
全てのがん種を急にするのは不可能です。
範囲があまりに広く、稀ながん種もあるので効果が出にくくなります。
「胃がん」「大腸がん」「肺がん」「乳がん」「肝・胆・膵がん」+「血液がん」
一般的に五大がんと言われる固形がんと血液がんが試験などでも問われやすい。
全てを覚え切ろうとせず
・がんの特徴や治療の考え方はどんなものか
・どういった抗がん剤が使われるのか
・代表的なレジメンで気をつけるべきことは何か
こういったことを広く学んでいきましょう。
3:支持療法の評価と対処を正しく覚える
支持療法を正しく知ることは、がん患者への質の高いフォローアップの一番の近道です。
試験勉強としてもですが、患者さんへの介入を行うタイミングでしっかり勉強しないといけません。
今出ている副作用を正しく評価する→程度に合わせて対処法を正しく提案する
この流れの中で必須の知識になります。
実際の試験でも副作用発現事例にどう対処するかはたくさん問われます。
正しく覚えていく流れは以下の通り。
・各有害事象のガイドラインでの評価指標を覚える
・評価ごとの対処法を知る
・その有害事象が出やすいレジメンを覚える
どのレジメンで出やすいかは少しずつ実践しながら覚える方が効果的です。
このサイトにガイドラインがまとまっているのでご参考ください。
4:抗がん剤とレジメンの知識を広げる
一番長く時間がかかり、ボリュームが多いのが「薬の知識」です。
薬剤師なので「薬に関しては一番詳しい人」であることが求められます。
・作用機序
・副作用や用量調整などの注意点
・相互作用
・レジメンの組み合わせや投与スケジュール
・適切なレジメンの使用タイミング
まず覚えていくべき項目をあげましたが、他にもたくさんの薬の知識が問われます。
前項でお伝えした「がんの基本」と「支持療法」の知識はあくまで薬のことを学ぶ土台だと思ってください。
一番大変で時間がかかるところですが、毎日少しずつ着実に知識を増やしていきましょう。

5:足らない知識を広げて深めて走り抜く!
がんの勉強にゴールはありません。
ただ100点を取るテストではないので基本的な知識をしっかり学んでいれば大丈夫です。
・あまり使用経験がない抗がん剤
・苦手意識でやり込めてない領域
・自分が直接関わらない診療報酬
この辺りは意識的に補うようにしてください。
ちなみに学会のセミナーに登場する知識は必ず押さえるようにしましょう。
ここのモレヌケがあるなら試験直前でも覚えきりましょう。
ステップ9:面接の準備
面接は毎年2月にあります。
提出した症例について確認されるので準備が必要です。
1:介入症例の見直しをしておこう!
毎年2月頃に面接があります。
面接では
面接では正しく理解して介入しているか2〜3症例選んで確認されます。
症例を書いて申請する8月から半年くらい空いているので読み返して思い出しておきましょう。
2:症例で書いた根拠を見直しておこう!
面接では症例の内容を簡潔に説明し、そのあと面接官からの質問に答えます。
・何を根拠に判断したのか
・もし別の有害事象が出た場合はどう対処するか
・症例に書いてある情報のその後はどうなったか
書いてある症例の記載だけではわからないことを面接で確認します。

3:清潔感は少し気をつけよう!
忘れがちな基本事項として清潔感は少し気にしてのぞみましょう。
医療業界で2月となると人員の減少や感染症の対応などで忙しい毎日を過ごすことが多いです。
疲れと共に外見が全くほったらかしになってるなら気にしてみてください。
面接官の印象としても「医療者として適切な振る舞い」ができているかチェックされるので全く気にしていなかった人はご注意を。
(外見重視ってことではないので髪やヒゲが伸びっぱなしでなければOKです)
ステップ10:学会に認定申請する
合格したら最後の仕上げ、認定の申請をしましょう。
注意点
外来がん治療専門薬剤師の申請と外来がん治療認定薬剤師の申請は別!
認定薬剤師になったらすぐ専門薬剤師の申請を出さないといけないのでタイミングを逃さないように注意しましょう。
これでゴールなので最後まで気を抜かず書類をそろて申請しましょう。
ステップ11(番外編):資格が活用できる環境かどうか考えておこう
外来がん治療専門薬剤師になったら、それで終わりではありません。
今後、専門薬剤師として知識を患者さんの価値に繋げていかないといけません。
あわてる事はないですが今の環境で資格を活かせるのかチェックしておきましょう。
今の職場でがんのフォローアップは可能?患者さんを支援できる環境なのか
まずは今の職場で資格が活かせるか考えましょう。
フォローアップができる環境なのかが重要になります。
・がん患者さんがそもそも少ない
・施設などの在宅業務がメインで日中の時間フォローアップできる余裕がない
・会社の方針でフォローアップに時間を使えない
会社の意向によっては収益性が悪いフォローアップをあまりしないようにって薬局もあります。
資格を取っても活かすための業務時間が取れない環境かどうか確認しておきましょう。
病院との連携が今後のカギ。病院の体制や連携のしやすさがかなり影響します
薬局内の環境として患者さんのフォローアップができたとしても病院の体制によって変わってきます。
・がんの専門薬剤師が院内にいない
・病院からの情報が手に入らない(情報提供書とかがない)
・薬局からの提案や情報提供を受けてくれない
連携がこんな感じだとフォローアップはうまくいきません。
連携の程度は場所によって違います。
薬局でがんばって取り組んでも連携ができないと患者さんに届きません。
どのくらい連携に前向きな病院かは重要な要素です。
「がん患者さんの支援ができる環境じゃなさそう…」そう思ったら環境を変えるのもアリです
目的が果たせない環境なら『転職』一択です。
職場自体を変えようと思っても時間も労力もたくさん消耗します。
・「がん患者さんの支援」への理解を得られない可能性がある(責任も労力も増えてイヤがられることがあります)
・環境を変えるのに労力を使いすぎて燃え尽きてしまう
・本当の目的は「自分の能力を活かしてがん患者さんを救う」ことのはず
時間も労力も限りがある貴重なものです。
自分のなりたい薬剤師になるための努力に使うべきです。
おすすめの転職サイトはこちら↓
(悩むより早めに相談相手を得て、安心して能力を活用できる状態にした方がいいです)
まとめ:必ず価値はある!まずは1歩を!
通院でがん治療をするのが一般的になっているので、地域にがんの専門家のニーズが上がっています。
薬局は病院と違い「患者さんの生活に近い」のが最大のメリット。
治療の継続性、安全性のため、地域にがんの専門薬剤師がいることは患者さんの価値になります。
取得のためにトライするだけでも今までよりも問題に対して正しく評価したり、判断できるようになります。
まずは1歩が大切。
保険薬局での専門薬剤師に興味があるならぜひ参考にしてみてください。
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