- 外来がん治療専門薬剤師になる手順が知りたい。
- 調剤薬局でも取得できるか教えてほしい。
- 忙しい毎日でも大丈夫か、不安を解消したい。
私は2021年から1年間外来がん治療専門薬剤師の取得に向けて取り組んでいます。
現在症例を書きつつ、2022年の外来がん治療認定薬剤師の合格へ。
大手調剤薬局の管理薬剤師と子ども2人の父親をしつつ、資格を取得するための工夫を発信中。
『誰でも忙しい中、資格とって武器を手に入れられる!』
初めにはっきり言いますが、正しい手順と環境がないと『外来がん治療専門薬剤師』の資格取得はむずかしい。
逆に忙しい中でも正しい順序を知っていれば、外来がん治療専門薬剤師の取得は進められます。
「何からすればいいか」を知らないと大変です。
仕事や育児、家事と同時に進めるにはボリュームが多め。
取得のポイントは「正しい進め方」を知っていること。
この記事では、外来がん治療専門薬剤師をとるための進め方を紹介しています。
特に調剤薬局でどうすればなれるかを中心にまとめてます。
「いま働いている薬局で資格取得ってできるの?」
そんな悩みを持つ方は、ぜひ参考にしてください。
外来がん治療専門薬剤師(BPACC)取得の手順を解説!まずは必要な要件を確認しましょう。
外来がん治療専門薬剤師になるためには、いくつかの条件をクリアしないとなれません。
まずは取得のためにどんな条件が必要なのか見てみましょう!
外来がん治療専門薬剤師・外来がん治療認定薬剤師になるための条件
『外来がん治療専門薬剤師』になるためには、まずは『外来がん治療認定薬剤師』にならないといけません。
似た言葉が多くややこしいですが、
『外来がん治療認定薬剤師』+病院研修 →『外来がん治療専門薬剤師』
こういった流れです。
【外来がん治療認定薬剤師の要件】
- 日本国の薬剤師免許を有し、薬剤師として優れた人格と見識を備えていること。
- 薬剤師としての実務の経験を3年以上有すること。
- 本法人の正会員であって、申請の時点で会費が未納でないこと。
- 日本病院薬剤師会生涯研修履修認定薬剤師、薬剤師認定制度認証機構により認証された生涯研修認定制度による認定薬剤師、日本医療薬学会認定薬剤師、日本薬剤師会生涯学習支援システム「JPALS」クリニカルラダーレベル5のいずれかの認定を取得していること。
- 本法人が認定するがん領域の講習または研修を60単位以上履修していること。
- 外来のがん患者のサポート事例を10例提出すること。
- 本法人が実施する外来がん治療認定薬剤師認定試験に合格すること。
(日本臨床腫瘍薬学会ホームページより引用)
何からやったらいいかわかりにくいかもしれません。
項目をざっくりと整理すると次のようになります。
【事前にクリアしておくべき条件】
- 学会会員
- 実務経験3年以上
- 指定団体の研修認定を取得
(※「専門」薬剤師は実務経験5年以上が必要です)
【これから取り組んでクリアする条件】
- 研修60単位を集める
- 10症例を提出する
- テストに受かる
- 面接に受かる
→APACC取得
【外来がん治療認定薬剤師の要件】
- 実務経験5年以上
- 病院実習30日間
→BPACC取得(外来がん治療認定薬剤師を持ってたら申請可能)
まずは必須要件でクリアしている項目を確認しよう!
外来がん治療専門薬剤師を目指す前に、絶対に必要な条件をクリアしてるか確認しましょう。
【必須条件】
- 学会会員
- 実務経験5年以上
- 指定団体の研修認定を取得
日本臨床腫瘍薬学会の会員でないと、外来がん治療専門薬剤師にはなれません。
セミナーを受けても単位はもらえないので、取り組む前にまずは学会への入会をしましょう。
※学会の会費8000円は年度ごとにかかります。
すぐに受けたいセミナーがなければ、1月の入会がオススメ。
入会はコチラからできます
実務経験5年以上
転職経験があっても実務で合計5年を超えていればOKです。
※認定薬剤師は3年ですが、専門薬剤師は5年!必要な実務経験の年数が違うので注意!
実務経験が短くても、モチベーションが高いうちに進めるのがオススメです。
指定団体の研修認定を取得
一定の質が認められた指定団体の研修認定薬剤師の取得が必要です。
どれもがんばれば1〜3年で取得可能。
すでに持っている人は要件に該当する資格か確認しましょう。
- 日本病院薬剤師会生涯研修履修認定薬剤師
- 薬剤師認定制度認証機構により認証された生涯研修認定制度による認定薬剤師
- 日本医療薬学会認定薬剤師
- 日本薬剤師会生涯学習支援システム「JPALS」クリニカルラダーレベル5
外来がん治療認定薬剤師になるため取り組むべきこと【3月からのスタートがオススメ】
まずは外来がん治療認定薬剤師になるためにすべきことを解説します。
【外来がん治療認定薬剤師の要件】
- 研修60単位を集める
- 介入事例10症例を提出する
- テストに受かる
- 面接に受かる
研修60単位を集める
日本臨床腫瘍薬学会が認める学術大会やセミナーを受けて60単位取得が必要です。
ただ学術大会2日間受けて20単位やセミナー受講で14単位など、必要なものをクリアすればすぐに達成できます。
代表的なのは
- スタートアップセミナー
- ブラッシュアップセミナー
- エッセンシャルセミナー
難易度別に用意されています。
単位数は気にせず、あなたに必要なものを順番に受けていってください。
介入事例10症例を提出する
はじめに断言しますが、介入は3月くらいから始めたほうがいいです!
介入の症例集めは初めの大きなハードルです。
- 標準療法が望ましい
- 介入した根拠
- 介入した後、どうなったか
こういった内容を10個集めないといけません。
他にも指定の書式で体裁を整えたり、根拠となる検査値が必要だったりします。
(この時の症例を元に面接で聞かれるので資料は整理して置いておきましょう)
資格申込が8月末。
3月から始めれば約半年あります。
がん治療を受けている方は早い段階から積極的に介入してください。
テストに受かる
外来がん治療認定薬剤師の筆記試験は毎年12月にあります。
2022年は12/3(土)実施
現在、パソコンが設置された会場でのCBT形式 75問
エッセンシャルセミナーなどの講習から出てくる問題も多いので、一つずつ着実に知識をつけましょう。
(このタイミングで症例査定の結果はわかりません。12月末にまとめて結果が来ます。)
面接に受かる
提出した10症例のうち、2〜3例が選ばれて面接で聞かれます。
- 既往や検査値など、症例に書ききれない情報
- 介入しようと思った理由やその後どうなったか
- 医師との連携のために病院とどういう取り決めがあったか
けっこう細かいことも聞かれます。
「本当に受験者が介入した事例だったのか」
症例の真偽も含めて聞かれるので、事前復習は必須。
注意点としては、「落とすため」の面接ではないので怖がらず。
いろんな人に症例チェックしてもらって、不備がなければクリアできるので安心して向かってください。
外来がん治療専門薬剤師へのランクアップ!【あとはスケジュール調整して研修を受けるだけです】
外来がん治療認定薬剤師+病院研修がクリアできれば、外来がん治療専門薬剤師になれます。
病院研修は日本臨床腫瘍薬学会のホームページで応募されるので見逃さないようにご注意を。
※病院の都合で研修受け入れの期間を絞っている場合もあります。希望の病院がある場合はホームページのリストをチェック!
ちなみに外来がん治療認定薬剤師になる前に研修を受けることは可能です。
店舗の勤務だけだと症例集めができない場合は先に研修を受けるのもアリ。
(ただ研修の有効期間もあるので、計画的にうけましょう)
あとは申請すれば外来がん治療専門薬剤師になることができます。
外来がん治療専門薬剤師になるためにすべき5つの行動
「要件はわかったけど、実際とれるのか不安。何からすればいいか教えてほしい」
そんな不安のため、まずすべき5つのことを解説します。
取得できる環境か
大前提、はじめに確認しておきましょう。
「症例が集まるくらい、がん患者が来るか」
断言しますが、取得の難易度は症例の集めやすさ次第です。
病院研修での介入事例を使うこともできますが、10症例全てはむずかしい。
ある程度は勤める店舗にくる患者さんから集めることになります。
化学療法が終わるのが遅い時間帯になる傾向にある病院だと、あなたが介入するのがむずかしいパターンも。
小さな子どもがいる時短のママさん薬剤師とか特に。
どうしても「がんの専門資格」取得を目指したい場合には可能な薬局への転職も視野に考えてみてください。
まずはムリなくがんばれる環境を整えましょう!
学会入会
外来がん治療専門薬剤師にむけて、いざスタート!
はじめの準備として、学会への入会は忘れずにしましょう。
理由は、
- 非会員で学術大会やセミナーを受けても単位が出ない(あとから入会しても出ない)
- セミナーなどの案内を自分で探さないといけない
単位が出ないって理由が一番大きいです。
ちなみに会費は年度毎にかかってくるので、申請する時期から計算して入会しましょう!
(慌てて11月とかに入会すると2ヶ月ほどで次の会費がかかってきます)
セミナーを受ける
日本臨床腫瘍薬学会が用意してくれているセミナーは積極的に受けるようにしましょう。
- ステップアップセミナー(7月)
- ブラッシュアップセミナー(7〜8月)
- エッセンシャルセミナー(8月)
どのセミナーも大体夏に固まってます。
8月は申請の時期でもあるので、症例のメドがたっていれば受けてみてください。
(セミナーは7〜8月ですが、申し込みは5月あたりに締め切りが多いです。春の進み具合で検討してください)
「がんとは?」って基礎から学べるので、症例介入ばかりしていた人でも安心して受けられます。
勉強する
介入や試験対策のために勉強は必須。
でも店舗管理や育児の中の勉強は大変です。
ポイントは「時期によって学ぶ項目を変える」こと。
具体的には
【1〜7月】 症例介入のために患者数の多いがん種レジメンや特徴的な副作用の対処法
【6〜12月】 試験を見越した網羅的な知識やガイドラインなどの専門性の高い知識
時期によって必要な知識は何か、を意識して勉強してください。
はじめの半年は症例集めに使える知識を増やす。
8月の申請がスムーズにいきそうなら試験対策として細かい知識を増やす。
こんな流れが効率的です。
仕事と同時並行になるので、ムリないペースで進めてください。
症例集め
介入の症例集めはギリギリになってがんばろうと思っても患者さんが来ないとムリです。
【ダメな進め方】
- ひさしぶりの勉強だから一通り勉強してから介入しよう
- 育児とかで体力残ってないから落ち着いてから介入しよう
- 管理業務が大変だからまずはできる勉強から始めよう
こんな進め方だとギリギリに症例が足らなくて困る可能性も。
オススメの進め方は
- がん治療でよく見る介入しやすい副作用のGradeと対策を覚える
- 患者数の多いがん種、来局してる患者さんが受けているレジメンを覚える
- 早い段階で店舗にくるがん治療の方の担当について介入を始める
症例が集まらないと来年に持ち越しになってしまいます。
準備ができたら早く介入を始めましょう!
病院研修はいつ受けるべきか
病院を受けるタイミングは決まってません。
外来がん治療認定薬剤師(APACC)になる前に受けることも可能です。
病院研修で関わった症例は申請の際の10症例として使えます。
店舗で10症例分の介入がむずかしい場合には先に研修を受けるのもアリです。
- 働いている店舗で介入はたくさんできるか
(目安:20〜30人くらい、がん治療患者がいるか) - 店舗の人員や会社の体制が整っているか
(30日間研修で抜けても大丈夫な環境か)
この2つを考えてみて、「症例が集まらないし、抜けてもOK」なら先に受けるのがオススメです。
調剤薬局で専門資格はメリットになるの?って疑問に答えます
外来がん治療専門薬剤師の資格を取ってもメリットがないとモチベーションは上がらないですよね。
取れたらすごい気はするけど、自分にとって得かどうか気になるところ・・・
資格の取得が「あなたのメリットになる」3つの理由を解説します。
結論、「メリットになる」
はじめに結論を言ってしまいます。
外来がん治療専門薬剤師は調剤薬局で確実にメリットになります。
会社もですが、「あなた」のメリットです。
理由は
- 今後、調剤薬局で専門資格のニーズが増える
- 大手調剤薬局はすでに手当がもらえるようになってる
- 異動などの生活のリスクが減るので、ライフプランがたてやすい
この3つが大きな理由です。
薬剤師飽和時代の「求められる人材」になる
外来がん治療専門薬剤師の資格は今後、調剤薬局で確実に求められるようになってきます。
理由は2020年にスタートした『専門医療機関連携薬局』の認定制度。
2022年の時点ではがんに関係する認定のみです。
この認定を受けるには、外来がん治療専門薬剤師など限られた専門資格を持つ薬剤師が必要となります。
大手調剤薬局は株主への計画説明の中で「専門医療機関連携薬局を増やす」といっています。
学会費や研修費の支給など、取得のサポートも充実してきています。
こういった背景から「外来がん治療専門薬剤師」があると転職で有利です。
(もちろん資格を使わない仕事がメインの薬局へ転職もできます。選択肢が増えるってことです)
手当がつく会社も→給与アップも目指せる
外来がん治療専門薬剤師を持っていると手当が出る会社が増えています。
大手調剤薬局を中心に進んでいます。
金額の目安は大手で月5万円ほど。
理由は2つ。
会社の専門性アップと数年後の利益のためです。
1つは専門薬剤師の所属が多いと会社の魅力が上がります。
株式市場でも採用活動でも大切なことです。
もう1つは、数年後の診療報酬改定を見越してです。
今後の診療報酬改定で専門医療機関連携薬局でないと取れない点数が出てくる可能性があります。
そのため専門薬剤師をたくさん確保することが必須。
改定のタイミングや点数によっては、今後手当が増える可能性も。
夢が広がりますね。
異動のリスクが減る
異動が多いと生活に影響が大きいですよね。
特に
- 子育て世代のお母さんは保育園の時間におおきく影響。
- 子どもが生まれたばかり。お父さん管理薬剤師はなかなか子どもに会えないことも。
- ダブルワーカーで働いていると仕事を続けるのがむずかしくなったり……。
会社は深く考えずに異動の指示を出してきたりしますが、けっこう影響は大きいです。
大手調剤薬局だと特にその機会が多かったりします。
外来がん治療専門薬剤師を持っていると、急な異動を回避できる可能性が高まります。
「専門医療機関連携薬局」の認定には専門資格を持った薬剤師の在籍が必要だからです。
「専門医療機関連携薬局」はこれから発展していく制度です。
外来がん治療専門薬剤師になれば5〜10年ほどは会社に大切に扱ってもらえる可能性が高まります。
(会社によって専門資格の価値が違いますが、安全性は高まります。)
住む場所、働く場所、働く時間が大きく変わらない安心感が手に入るかもしれない。
普段の生活でいそがしいなら、資格をとる大きな価値です。
外来がん治療専門薬剤師は間違いなくアナタの今後の武器になります。
ムリのない範囲で進めてみましょう!