こんな疑問があればぜひ読んでみてください。
カペシタビンや分子標的薬の副作用のイメージが強い「手足症候群」
副作用のフォローとして説明したことがあっても、実際の詳しいところはわからないままだったりします。
今回は「手足症候群」のフォローについて全体像がわかるよう解説してます。
【この記事からわかること】
・手足症候群とは何か解説【分子標的薬の服薬指導では必須の知識】
・手足症候群の予防法・治療法
・手足症候群を予防・緩和させるために【服薬指導3つのポイント】
・参考書籍
手足症候群とは何か解説【分子標的薬の服薬指導では必須の知識】
手足症候群はカペシタビンなどのフッ化ピリミジン系の副作用としてよく知られています。
ざっくりとどういった疾患かを説明すると、
「手のひらや足の裏に発赤、疼痛、水疱、角化などの皮膚症状を生じる副作用」
薬局で抗がん剤のフォローをしていると出会うことの多い副作用。
対処法を知っておくと服薬指導や処方提案がスムーズになるのでみていましょう。
手足症候群の予防法・治療法
まずは対処法の基本を説明していきます。
手足症候群の予防法
予防法の基本は
清潔にする
保湿する
刺激を与えない
この3つです。
それぞれのポイントを説明します。
清潔にする
清潔にする時の注意点は洗いすぎないです。
刺激が強いと症状が悪化するリスクがあります。
石鹸はよく泡立てて、よくすすぐ。
高温、長時間の入浴は避ける。
皮脂を落としすぎないようにする。
「やりすぎ注意」ってことです。
コロナ禍でアルコールなどを使う機会も多いですが、低刺激性の消毒液などを使用するようにして治療への影響を減らせるよう伝えましょう。
保湿する
治療開始の時から保湿はこまめに行います。
白色ワセリン、ヘパリン類似物資含有製剤、尿素含有製剤などを使います。
手洗い後、毎回塗布。
足は1日5回を目標に塗布。
就寝時に塗布して、木綿の手袋や靴下を履いて保護する。
「1回で大量」ではなく「何度もこまめに」するのが効果的。
1FTU(1フィンガー・チップ・ユニット)で大人の両手分が使用量の基本。
足も同時に塗るなら2FTUくらい。
ちなみに1FTUは大人の人差し指の一番先から第一関節までの量(約0.5g)
刺激を与えない
日常から刺激を避ける対策が必要です。
ゆったりした木綿の靴下を履く。
柔らかいスニーカーやサンダルを履く。
直射日光を避ける。
生活スタイルによって刺激を受けやすいタイミングが違います。
患者さんの生活を聞きつつ、フォローしていきましょう。
手足症候群の治療法
・Grade2以上(痛みが伴う、日常生活に支障がある)場合には、strong以上のステロイド外用剤の使用を行います。
Strongest (最も強力)
- デルモベート
- ダイアコート
Very strong (かなり強力)
- フルメタ
- アンテベート
- トプシム
- リンデロンーDP
- デルモゾール
- マイザー
- ネリゾナ
- テクスメテン
- パンデル
Strong (強力)
- エクラー
- メサデルム
- ボアラ
- ベトネベート
- リンデロンーV
- フルコート
※病院の採用品やよく処方される外用剤を強度別に把握しておくと、処方提案の時にスムーズです。
添付文書にGradeごとの対処が書いてありますが、ほとんどの薬は
Grade2以上で休薬を行います。
理由は
- 手足症候群が急性毒性であり、蓄積性がないため休薬で改善しやすい。
- Grade3以上になると治癒に1ヶ月以上かかることがあり、治療への影響が大きくなる。
- カペシタビンにおいて、休薬や減薬を行なっても適切に治療継続が行われれば、有効性が損なわれない報告がある。
「痛みはないか」「日常生活に支障はないか」を聞き取って悪化していないか確認することが大切です。
外用薬を使うときの注意点
外用剤を使用するときの注意点は3つ。
- 保湿剤は優しく広げるように使う(すりこまない)
- 赤く腫れたり、痛みが出たらステロイド外用剤をしっかり併用する
- 外用剤の使用順序は、保湿剤を全体に使う→ステロイド外用剤を病変部位に使う
この3つは外用剤を使うポイント。
何より刺激を与えず、しっかり保湿する。
Gradeが上がらないように服薬指導を行いましょう。
手足症候群を予防・緩和させるために【服薬指導3つのポイント】
手足症候群の発現、悪化を防いでいくための服薬指導のポイント3つを解説していきます。
【ポイント1】痛みはガマンしない!まずはしっかりとした保湿を。
手足症候群の悪化は治療継続に関わってきます。
適切なGrade評価と外用剤の使用は必須です。
服薬指導で伝えるべきは
- 痛みが出てきたらガマンせず相談する。
- ステロイド外用剤をこわがらず、必要なら使う。
- こまめに保湿を続ける。特に足は日中できないので意識的に。
抗がん剤の開始時から伝えて患者さんが意識できるようにしたいですね。
【ポイント2】患者のリスク因子に注意!
手足症候群は急性毒性のため代謝能などで症状のリスクが変わります。
- 高齢者
- 貧血
- 腎機能障害
こういった患者さんだとGrade 2以上の手足症候群が発現することが多いので、特に念入りに服薬指導を。
(とはいえ、伝えるべきことは「保湿を忘れず、こまめにしてくださいね!やりすぎくらいがちょうどいいですよ!!」ってことです)
【ポイント3】手足症候群がひどくなってしまったら。
手足症候群はこまめに保湿をしていても出てしまうときはあります。
悪化することもあります。
では、ひどくなってきてらどう指導すればいいのか。
- 基本は治療薬の休薬・減薬の提案をする
- 外用剤は変わらず続ける
- 厚手の靴下などで保護する
カペシタビンなどのフッ化ピリミジン系の薬だと皮膚が薄くなります。
ぶつけただけで傷ができることもあるので保護することが大切です。
ひどくなったら
- これ以上悪化しないように保湿・保護する
- QOLが下がらないように生活の中で注意する
この 2つのポイントを意識してフォローするようにしましょう。
参考書籍